2023年7月、東京・新橋演舞場で、新作歌舞伎『刀剣乱舞 月刀剣縁桐(つきのつるぎえにしのきりのは)』が上演されました。
歴史上の名刀に宿る付喪神が顕現し、歴史の改変を企む時間遡行軍を倒す設定や、観客を「審神者」と呼ばれるゲームプレイヤ―になぞらえるなど原作の世界観はそのままに、歌舞伎の作品として描く初めての試みです。
厳かな雰囲気のなか、槌の音が小気味よく響き、名刀「三日月宗近」が生み出されるところから舞台は始まります。そして六振りの刀剣男士が、三日月宗近(尾上松也)、小烏丸(河合雪之丞)、同田貫正国(中村鷹之資)、髭切(中村莟玉)、膝丸(上村吉太朗)、小狐丸(尾上右近)の順に、和楽器が奏でる調べに合わせ、名のって見得を披露すると、劇場は一気に刀剣乱舞の物語に引き込まれ、期待のこもった拍手が巻き起こりました。
室町時代にやってきた宗近たち。時間遡行軍が現れた時代の将軍足利義輝(右近)と妹紅梅姫(莟玉)、そして家臣の松永弾正(中村梅玉)の前に現れ、彼らをそばで見守っていくことにします。義輝と紅梅姫、そして刀剣男士たちが、琵琶や尺八、箏などの妙なる音曲とともに舞う場面は華やかで美しく、一方、時間遡行軍との立廻りは躍動感にあふれ、歌舞伎らしい醍醐味がそこかしこに散りばめられています。
将軍である義輝に憑りつき天下を我がものにしようとする異界の翁と嫗の謀略により、徐々に乱心していく義輝。自らに諫言する、弾正の息子・松永久直(鷹之資)や、深い縁を感じていた宗近までも手にかけようとします。自らの正体を明かした宗近から、史実通りに弾正が義輝を討たねばならないことを聞いた久直は、苦悩の末に、陰腹を切って父に将軍討伐の覚悟を訴えます。悲哀に満ちた展開を義太夫がドラマティックに彩り、観客の涙を誘いました。弾正は将軍を討つことを決意し、刀剣男士たちは時間遡行軍や、異界の翁と嫗が呼び出した禍獣との戦いに向かっていきます。
薩摩琵琶による幕外の圧巻の演奏に続き、浅葱幕が振り落とされ、いよいよ義輝との最後の戦いへ。廻り舞台を駆使した迫力ある立廻りの末、堂々と滝へ身を投げた義輝。万雷の拍手が場内を包むなか、実は昔の主人であった義輝の最期を見届けた宗近は一人哀しげに佇むのでした。弾正に別れを告げ、役目を終えた刀剣男士たち。最後のカーテンコールでは、熱い歓声と拍手がいつまでも続き、連日大盛り上がりとなりました。
さらに、2024年4月5日には歌舞伎の舞台公演を映画館で楽しめる映像作品「シネマ歌舞伎」として公開されることが決定しました。
より多くの方にご覧いただけるメディアミックスの可能性が広がっていきます。

©NITRO PLUS・EXNOA LLC/新作歌舞伎『刀剣乱舞』製作委員会